Der Glockenbaum

独逸在住日本人の日々想ふこと。

海外勤務のすゝめ - 現地採用、現地起業、駐在員

先日、ある友人がドイツでの就職先を求めてこちらの人材派遣会社に登録し、その会社の担当者と簡単な面接をしたと聞きました。しかし、その担当者(日本人)の対応が酷かったようでとても憤慨しているようでした。確かに、話を聞いていると「どうしてそこまで言われる筋合いがあるのか」と少し神経を疑いたくなります。その友人にはいずれはある特定分野で働きたいという目標があるのですが、そのことに関してもはなから決めつけて「不可能だ。」「日本人を雇うメリットがない。」などと言い放ったそうです。その人材派遣会社は主に日本人の紹介、派遣を主だって行なっているようですが、そのような会社 ーあくまで第三者ー が人の目標や目的に関してとやかく言う権利があるでしょうか。

確かに、ただでさえ外国人という厳しいハンディキャップを抱えて生きるということを考えると仕事の職種、業種ということまで細かく選べることはなかなか無いのも事実です。しかし、目標があることに対してとやかく言う権利は誰にも無いと思います。その友人がそんな嫌がらせになど屈せず目標に向かって邁進することを私はただただ遠くから祈り応援するばかりです。
最近でこそ珍しくはなくなってきたこのような海外での就職。今日はそのことに関して日頃思っていることも交え書きたいと思います。
 
では、早速。
一般的に海外で働く方法しては下記のような選択肢があると思います。
 
  1. 海外転勤の可能性がある日本の企業に就職し、そこから派遣してもらう (日系企業駐在員型)
  2. 海外転勤の可能性がある外資系企業に就職し、そこから派遣してもらう (外資系駐在員型)
  3. 自力で現地へと赴き、自ら現地の日系企業へと応募する (日系企業現地採用型)
  4. 自力で現地へと赴き、自ら現地の企業へと応募する (現地企業現地採用型)
  5. 現地で起業する (現地起業型)

この中で一番恵まれているのは、やはり今でも1、2の駐在員型でしょう。金銭的自己負担もほとんどなく、現地法人と日本の両方から給与も支払われ、多くの場合、現地での居住費なども会社が全額ないし一部負担してくれます。その他、現地での手続き等に関しても現地法人の社員が大概のことは済ませてくれるため、特段不便を被ることもありません。その他、現実的には稀なケースかもしれませんが、外資系企業の駐在員として海外の本社や外国の駐在事務所に赴任するというケースもあります。
また、一般的に駐在員は好待遇なため、それを基準として考えてしまうと他の働き方に不便を覚えてしまうかもしれませんが、駐在員の待遇は通常のものとは一線を画していると考えておくのがいいと思います。
では、ここで上記の1~5それぞれのメリット・デメリットに関して簡単にまとめていきたい思います。
 
  1. 日系企業駐在員型
    メリット
    ・現地での住居費が全額もしくは一部会社から支払われる
    ・現地でのビザ等の事務手続きは全て現地社員が代行してくれる
    ・任期期間中の日本渡航費が会社から支払われる
    ・赴任、帰任時の引越し費用が会社から支払われる
    ・給与が現地法人ならびに日本の本社から二重で支払われる
    ・いづれは日本に帰国するという保証がある

    デメリット
    ・駐在期間が不確定のことが多い為、ライフプランに影響が出る
    ・赴任先は会社が決める為、自ら好きな場所へ行くことは出来ない
    ・赴任、帰任時期は会社が決める為、自らの希望通りとはいかないことが多い
    ・駐在員としての責任が大きく、業績向上への責任も伴う

  2. 外資系駐在員型
    メリット
    ・現地での住居費が全額もしくは一部会社から支払われる
    ・現地でのビザ等の事務手続きは全て現地社員が代行してくれる
    ・任期期間中の日本渡航費が会社から支払われる
    ・赴任、帰任時の引越し費用が会社から支払われる
    ・(給与が現地法人ならびに本社から二重で支払われる)会社次第・(いづれは日本に帰国するという保証がある)会社次第

    デメリット
    ・駐在期間が不確定のことが多い為、ライフプランに影響が出る
    ・赴任先は会社が決める為、自ら好きな場所へ行くことは出来ない
    ・赴任、帰任時期は会社が決める為、自らの希望通りとはいかないことが多い
    ・駐在員としての責任が大きく、業績向上への責任も伴う

  3. 日系企業現地採用型
    メリット
    ・現地採用のため大概の場合、日本帰国の可能性は低い
    ・現地採用の為、極稀にだが契約によっては転勤の可能性がある
    ・駐在員とは異なり、自分で赴く地を決めることが出来る
    ・駐在員とは異なり、自分でその地に留まるか日本へ本帰国または別の国へ行くかを決められる
    ・日系企業の為、外国とは言え日本の働き方や常識が通用する部分がある
    ・現地採用のスタッフは現地語や現地に精通していることが多く、現地との取引や交渉に於いて能力を発揮することができる
    ・多くの場合、給与は現地の通貨で支払われる為、為替変動を受けることがない

    デメリット
    ・日本へ帰国する場合や他国へ移住する場合も全て自力・自腹で行う
    ・日本への本帰国の際、再就職先を探し転職活動をすることになるケースが多い
    ・日系企業の現地採用スタッフとあり、昇給や昇格に関してリミットがあるまたは全くない
    ・ビザサポートがないなど、海外での職というだけで足元を見られ悪条件を強いる企業もある(ワーキングホリデービザの強要等)
    ・日系企業である為、日本の常識やルールを強要してくる企業もある(サービス残業、有給の未消化等)

    対駐在員デメリット
    ・現地での居住費に関して、手当が出ることは少ない
    ・現地でのビザ等の手続きに関して自力で行うことも少なくない
    ・日本への渡航費などに関しては支給されることは少ない
    ・給与は現法からのもののみとなる

  4. 現地企業現地採用型
    メリット
    ・現地採用の為大概の場合、日本帰国の可能性は低い
    ・現地採用の為、契約によっては転勤の可能性がある
    ・駐在員とは異なり、自分で赴く地を決めることが出来る
    ・駐在員とは異なり、自分でその地に留まるか日本へ本帰国または別の国へ行くかを決められる
    ・現地企業の為、現地の働き方で(に従って)働くことが出来る
    ・現地採用のスタッフは現地語や現地に精通していることが多く、自らの能力を大いに発揮することができる
    ・多くの場合、給与は現地の通貨で支払われる為、為替変動を受けることがない
    ・日系魏業の現地スタッフとは異なり(職種に依る)、昇給や昇格に関してリミットがない

    デメリット
    ・日本へ帰国する場合や他国へ移住する場合も全て自力・自腹で行う
    ・日本への本帰国の際、ほぼ確実に再就職先を探し転職活動をすることになる
    ・ビザサポートがないなど、海外での職というだけで足元を見られ悪条件を強いる企業もごく稀にある(ワーキングホリデービザの強要等)
    ・現地企業とあり、現地の働き方やルールを強いられる
    ・現地企業とあり、日本語が通じないなど日系企業より言葉の壁が大きい

    対駐在員デメリット
    ・現地での居住費に関して、手当が出ることは少ない
    ・現地でのビザ等の手続きに関して自力で行うことも少なくない
    ・日本への渡航費などに関しては支給されることは少ない
    ・給与は現法からのもののみとなる

  5. 現地起業型
    メリット
    ・自ら事業を起こす為、自分の意志や能力で挑戦し、自分の思うように働くことが出来る
    ・日本で起業する場合と同様、自らの能力で事業拡大を図ることも可能である
    ・海外で起業する場合、場所によっては有限会社を設立し小規模でも事業を行える
    ・海外で起業する場合、場所によっては税金面などで優遇措置がある国がある
    ・国によっては、日本よりも個人事業主への優遇措置が確立している所がある

    デメリット
    ・日本で起業する場合と同様、事業が安定するまでの生活が不安定になる
    ・日本で起業する場合と同様、起業には大きな責任が伴う
    ・日本で起業する場合とは異なり、遵守するべき法律も異なる
    ・扱う商品やサービスによっては国それぞれ規格等があり、まずはそちらの承認が必要となることなどがある
    ・国によっては外国人の起業に対し否定的な場所もある
 
日本人が海外で働く場合、主にこれらの5パターンが一般的ではないかと思います。
この他、海外で働く場合の留意しておくべき点などもありますので代表的な部分を下記に記しておきます。
 
  • 年金
    年金などに関しては日本と「社会保障協定」を締結している国での就労をおすすめします。日本の場合、国民年金・厚生年金には原則として受給資格期間というのがあり、国民年金・厚生年金の被保険者期間が通算で原則25年以上あることが年金受給の条件になっています。先述の社会保障協定は協定締結国間において外国で働いていたとしてもその期間を年金受給国の受給資格期間として換算することができるという制度です。社会保障協定に関しては下記のリンクを参照してみると良いかと思います。

    年金について - 社会保障協定 | 日本年金機構

  •  医療保険
    医療保険に関しては国により制度も様々です。アメリカなど日本の様な国民皆保険制度が無い国もある為、医療保険に関しては渡航前の準備段階で渡航先の医療保険制度がどうなっているのか調べておく必要があります。
    ちなみにここドイツの医療保険は大きく分けて2種類あります。

    ・公的保険(公的健康保険組合)Gezetzeliche Krankenkasse
    こちらがごく一般的な医療保険で被保険者が被雇用者の場合、雇用者が保険料の半分を負担することが義務付けられています。基本的な治療内容に対しては追加料金不要で治療を受けることができます。しかし、プライベート保険の被保険者のみを対象とする病院などでの治療は受けることができません。
    また、こちらの公的保険はプライベート保険があくまで個人のみを対象とした保険であるのに対し、配偶者や家族を扶養に入れることが可能です。その為、世帯主としてはありがたい保険と言うことができます。

    ・プライベート保険 (民間保険会社)Private Krankenkasse
    こちらの医療保険は公的保険と比べると大学病院で部長医師の診察が受けられたり、入院の際の病室優遇など公的保険と比べると好条件・好待遇が得られますが、その分医療費も高額で加入に際し最低所得が決められており、その所得に満たない人は加入することが出来ません。これは一定の線引きの為であると同時に、もう一つ理由があります。プライベート保険の被保険者は治療を受けた後、保険料、診察料に加え医療費の請求を全額一度支払うことになります。要するに、全てを一度建て替えた上で後々、医師からの請求書を保険会社に送付してその全額または一部(治療によるがほとんどのケースが全額返金される)が還付されるという仕組みになっています。その為、その金額を保証できる目安として所得制限が設けられているのです。
    ちなみに今年2014年のプライベート保険被保険者の最低所得制限は2013年の52,200EUR(年収)以上から1350EUR上昇し53,550EUR(年収)以上となりました。現在の為替レート137円(2014年8月20日現在)で計算すると、最低でも年収約730万円の所得がある人のみ加入できるという計算になります。

  • 住民票
    こちらも日本または海外に住所を置くかどうかで住民税の支払い義務や年金の納付義務などが生じたり、日本で国民健康保険に加入して日本の医療が受けられたりと条件が変わってくることがあります。

    ・日本に住民票がある場合
    1. 住民税の支払い義務が生じる
    2. 日本での国民年金の納付義務が生じる(社会保障協定のある国に関しては二重加入防止の考えに基づきどちらかが免除される)
      年金Q&A - 国内に住所を残したまま(住民票をそのままにして)海外に転居して、相手国制度に加入義務が生じた場合、どのような取扱いになるのですか。 | 日本年金機構
    3. 国民健康保険への加入義務が生じる


    ・住民票を海外で登録した場合

    1. 通常は現地の社会保障制度に加入することになる
    2. 日本での国民年金納付を任意で継続することができる
    3. 住所が日本にないため国民健康保険へは加入できず日本での治療の際は旅行保険もしくは海外に対応した在住国での保険に加入する必要がある

      海外在住と、国民健康保険について質問です。 今からちょうど一ヶ月前に二年の海... - Yahoo!知恵袋

 
いかがでしたか?
海外で働くことが以前と比べさほど珍しいことではなくなった昨今。だからこそ、前もって知っておくべき点、調べておく必要があることなども同時に増えていると思います。様々な雇用形態に現地の様々な法律や制度。自分に合っている国や実現可能な雇用形態などを見極め、行き先が決まったらしっかり下調べをするというのが海外で働く人がすべき最低条件だと私は思います。これは駐在員や現地採用、現地での起業者などどの雇用形態に関わらず行うべきだと思います。海外で働くということは理由はどうであれ、その地域でその地域の習慣に従い一定期間お世話になるということなのですから。「郷に入っては郷に従え」という教えの第一歩だと思います。
確かに海外生活では、面倒くさい手続きや自ら動かなければ誰も助けてはくれないという点など色々と不便を感じることも多いと思います。しかし、そうした些細なこと一つ一つも日本にいては出来ない経験。何事も経験と思い一つ一つこなしていくと海外での生活がより一層楽しくなるのではないかと思います。
グローバル化や国際化、社内公用語英語化などが叫ばれて久しいですが、最近の若者は内向的で海外に興味が無いと言われています。そんなご時世ですが、日本を飛び出して広いフィールドで働く醍醐味を僕のような若い世代にもっと体験していただきたいものです。