Der Glockenbaum

独逸在住日本人の日々想ふこと。

移民問題に見るEUの理想と現実、もはや対岸の火事ではない日本

反イスラムデモとそうした排他的思想に反対するデモ

先日1月19日(月)、欧州の急速なイスラム化に反対する団体のデモ行進とそれに反対する人々のデモがミュンヘン市内中心部の数カ所で行われました。

一週間前の12日(月)にも同様のデモが行われ、反イスラム団体Pegidaのデモ参加者1500人とそのデモに反対する市民などおよそ2万人がミュンヘン旧市街の南門であるSendlinger Torで対峙する形となり、一部のデモ参加者同士でもみ合いが起こり警備にあたった警察官にも負傷者がでたとのことで、今回も注意喚起が行われていました。

そんな中、私はちょうどデモの時間帯にSendlinger Torを訪れる用事があったので様子を窺ってきました。

当日、私が訪れた際は反イスラム団体に反対する人々が集結しており"Asyl ist Menschenrecht.(亡命や難民申請は人権である)" や "München ist bund(ミュンヘンはカラフルだ=ミュンヘンは多様性を受け入れる)"といったプラカードを掲げ、ステージのデモ主導者の演説に拍手喝采で応じている様子や移民の人々のスピーチなどに聞き入っている人々の姿がとても印象的でした。

残念ながら当日は反イスラム団体のデモには遭遇することはできませんでしたが、反イスラム主義に反対する人々のデモの雰囲気を写真でお伝えできればと思います。

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Sendlingerstraßeから見たSendlinger Tor。既に人集りが。
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門をくぐるとこのような感じで反イスラム思想に反対する人々が集っていました。
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奥に見えるステージではデモ主導者や実際にドイツに移住してきた移民の方々がスピーチをしていました。
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写真やや中央に見える「U」の文字。実はここは地下鉄の主要駅なのですが地下におりられない程の混雑ぶりです。
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"München ist bunt(ミュンヘンは多様である)"というプラカードがとても印象に残っています。
 
ドイツに住んでいる外国人の身分としては、反イスラム思想の様な排他的思想が流布するよりはリベラルな政治思想の人々が増えドイツが開かれた社会であって欲しいと思います。
しかし一方で、欧州内でのイスラム教徒の存在感が急速に増し、彼らがキリスト教社会である欧州の文化や風土に適応しようとしないということに関しては、反イスラム思想が台頭してくるのもやはり理解できるというのが私個人の感想です。
例えば、日本語もまともに話せないような外国からの移民が集団で独自のコミュニティを形成したり、日本の文化に適応しようとせず我が物顔で非常識な言動ばかりを繰り返していたらどう感じるでしょうか。
さらに、日本人が日本国内で移民や移民を背景に持つ人々などによって襲撃されたら、どう感じるでしょうか。
先日のフランス、パリでの新聞社Charlie Hebdo襲撃事件の犯人もやはりアルジェリア系の移民でしたし、その後ベルギーなどで行われた一斉摘発の対象者もイスラム系移民だと言われています。
最近、日本でも活発化する移民受け入れ議論ですが、欧州で実際に起こっている事例を含め移民問題について触れてみたいと思います。
 
戦後からイスラム文化に触れてきたドイツ
ドイツ、主に西ドイツは戦後復興を遂げるために多くのGastarbeiter(ガストアルバイター)と呼ばれる一時的滞在を目的とした外国人労働者を世界中から集いました。
中でも最も多かったのがトルコからの労働者で、彼らの多くは家族をトルコから呼び寄せ復興を成し遂げた後も母国に戻ることはなく、ドイツに居住し続けました。
当時の西ドイツ政府はあくまでも一時的措置として外国人労働者の受け入れを行っていたため、労働者にドイツ文化への理解やドイツ語を習得するための学習などを特に義務としては行ってきませんでした。
その結果、ドイツ語もまともに話せない多くのトルコ人が集団でコミュニティーを形成し次第にドイツ社会から疎まれる存在へとなっていきました。
現在はその移民の2世、3世の世代になっており、ドイツ生まれドイツ育ちでドイツ語を母語とする人々の時代になっています。
しかし、現在においてもそうした背景を持つ人々の多くは、家庭環境からか高等機関での教育を受けていない人が多く、就業時もホワイトカラーの職に就ける人はまだまだ少数派だと言えます。
こうした背景には、当時のトルコからの移民の家庭環境も影響していると言います。
ドイツ政府が移民受け入れを始めた当時、トルコからドイツに移住してきたトルコ人の多くは、母国トルコにおいても地位の低い仕事に就いていた人々が多く、新天地ドイツで一山当てようと考えた肉体労働者がほとんどだったと言われています。
これに関しては、トルコ系ドイツ人の友人も同じことを言っていました。
その為、移住後もドイツの生活やドイツ語の習得など、ドイツ文化に理解を示さず適応しようとしなかったのが大きな問題だと言われています。
また、キリスト教のドイツとイスラム教のトルコというのは宗教的にも大きく文化・風習が異なり、それが移民の適合の障害にもなったと言われています。
このように、ドイツは戦後復興の時代からトルコというイスラム圏の文化に接してきました。
 
欧州内で急速に増える新たなイスラム系移民
ドイツに限って言えば、Gastarbeiterの受け入れから50年以上が経過した現在においてもトルコ系移民との共存はうまくいっているとは言えない中、また新たなイスラム圏からの移民問題が浮上します。
それが2010年に北アフリカのチュニジアで端を発した「アラブの春」と言われるアラブ民主化運動です。
この民主化運動によるアフリカ各国での治安情勢の悪化などを理由に、多くのアフリカ人たちが木造の船などで地中海を渡りイタリアやスペインといった地理的にも比較的近い欧州の国々へと渡って来るようになりました。

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アフリカからの移民による不法入国の様子などがYouTubeに上がっていましたので幾つか紹介したいと思います。


モロッコ・スペインの国境を越える密入国者たち - YouTube


モロッコからスペインに大量の移民が押し寄せ死傷者多数※閲覧注意 - YouTube


La Guardia Civil se emplea con contundencia en un nuevo salto a la valla de Melilla - YouTube *

* Melillaというのは北アフリカにあるスペインの飛地領。欧州を目指す不法移民の中継地点となっている。

 
欧州の手厚い社会保障を目当てに急増するアフリカ系移民
去年の1-5月の間にイタリアに上陸した不法移民の数は、2013年通算の数を超えたそうです。
こうして海を超え不法に入国した移民の多くはスペインやイタリアなど欧州内では経済状況があまり良いとは言えない国々を足がかりとし、その後は経済的にも安定しているドイツや、豊富な社会保障財源を有する北欧諸国などを目指して北上してきます。
実際、ドイツの中でも外国人の数が他州とくらべまだ少ないと言われるバイエルン州。
そんなバイエルンでも最近、アフリカ系移民の数が急速に増加したと肌で感じます。
例えばミュンヘン中央駅近辺はもともと外国人の居住率が高く、今まではアラブ系やトルコ系が中心でしたが、ここ数年でアフリカ系移民の人数が急速に増えアフリカ系を見かける頻度が急激に高くなりました。
世界的にも社会保障が手厚い北欧の国々でも、急速な移民の増加が多くの問題を引き起こしていると言います。
先の第二次大戦以降、ノルウェーやスウェーデンに代表される北欧諸国は積極的に移民の受け入れに取り組んできました。
しかしここ数年、特に「アラブの春」以降、移民による犯罪率が上昇し大きな問題となっています。
結果として彼らの移民政策が自国の治安を低下させ、自分たちの首を締め付けているのです。


スウェーデン炎上 2013年の移民暴動とその原因 - YouTube


Krawalle in Schweden: Einwanderungspolitik fehlgeschlagen? (スウェーデンの暴動: 移民政策の失敗か?) - YouTube


ノルウェーで増えるレイプ犯罪 移民問題 - YouTube

私もノルウェーを訪れたことがありますが、当初は移民が多いという印象は受けなかったのですが一部の地域に足を運ぶと移民の姿ばかりが目に入ってきました。

こうした移民の多くが北欧の豊富な社会保障財源を目当てにしており、実際に働かなくても生活保護としてアフリカにいた事よりもはるかに多くの収入を得ています。

しかし、こうした社会保障制度は北欧の人々が長期に渡り世界的に見ても高い税金や社会保障費を収めてきたからこそ成り立ってきたのであり、その犠牲も払わずに厚かましくもその恩恵だけを受けようとする移民が列をなして押し寄せているのが現状です。

 

EUの理想と現実、そして日本の移民政策

シェンゲン協定加盟国が増えた現在、欧州内ではヒト・モノの移動が自由です。

渡航者はシェンゲン協定加盟国間の移動ではパスポートチェックもなく自由に往来ができます。

まさに、ヨーロッパを一つの国のようにするというEUの理想が実現した証と言えるでしょう。

しかし、それと同時に多くの問題が発生してきたわけです。

今回は主にドイツのトルコ系移民と欧州において急増するアフリカ系移民について触れましたが、EU内には加盟国が拡大するにつれ後からEUに加わった東欧諸国(旧社会主義国家)や南欧からの移民問題も存在することを忘れてはいけません。

一見すると、ヒトやモノの移動も自由になり関税もないEUという共同体はある意味で理想的に見えるかもしれません。

しかし、中を覗いてみると移民問題一つをとってみても問題山積というわけです。

 

EUにおいて今後、移民問題はより深刻なものになることが想定されます。

日本も対岸の火事ではなく、移民の受け入れということに関してはもう少し慎重になるべきではないでしょうか。

実際に欧州・ドイツに住んで移民問題にもに関して日々触れているからこそ、尚更日本のナイーブな考え方には不安を抱かざるをえません。

例えば世界には、人のものを盗んだり、人を殴ったりしても構わないという未成熟な社会が残念ながらまだ多く存在します。

島国日本は、そうした地域の人々も念頭に「話し合えば分かってもらえる」というような甘い理想は捨て、移民や難民の受け入れに関してはもう少しシビアに考えるべきだと思います。

人口減少に対する付け焼刃的な解決策としてではなく、移民問題は長期的視野に立ち議論・検討する必要があると思います。

 

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